妊活における子宮内膜症治療の選択
治療法には、ホルモン治療(内服)と手術療法があります。
ただ、ホルモン治療を行うと基本的には妊娠しません。
そのため、不妊治療における子宮内膜症の治療とは、手術をするかしないかの議論になります。
(ultra long法やリュープリン後移植法などは例外として…)
手術療法は、学術的にするべき、しないべきの結論は出ていないのが現実です(肯定論文も否定論文も複数ある)。
子宮内膜症治療の判断が難しい最大の要因は、内膜症が不妊に対してどれほどの悪影響を与えているか(重症度)は、腹腔鏡手術で観察する以外に正確に評価することができない点です。
重症度は分からないけれど、治療方針は選択しなければなりません。
以下は、私見です。
そのため、限られた状況を除けば、誰でも同じ診断になるということはありえないと私は考えます。
腹腔鏡手術をせずに、内膜症の重症度を評価するとしたら、「骨盤内膜症の程度」「チョコレート嚢胞の大きさ」になると思います。
「骨盤内膜症の程度」とは、問診や内診から判断するしかありません。癒着の度合いとある程度リンクするかもしれません。軽症なら無治療で妊娠することもあるでしょう。中等症なら、手術をしたことで自然妊娠率が上がるかもしれませんが、結果的に手術しても自然妊娠しないかもしれません。重症なら、手術をしても妊娠しないかもしれません。全体としては軽症であっても、卵管采が閉鎖している状況は手術では改善できません。つまり「程度」のバリエーションはほぼ無限にあり、手術したことが結果に結びつくとも限りません。
「チョコレート嚢胞の大きさ」というのも1つの指標にはなります。まぁ2cm以下で手術すべきという人はいないと思いますが、では何cm以上なら手術すれば良いと言う単純なものではありません。もちろん、「骨盤内膜症の程度」との兼ね合いもあります。
手術療法は、
一般不妊治療の妊娠率を上げるという報告があります。飛躍的に妊娠率が上がる訳ではありませんが、手術自体のリスクとAMH低下というデメリットは確実に受け入れるしかありません。
体外受精においても妊娠率が上昇するという報告がありますが、低下するという報告もあります。ただ、手術自体のリスクとAMH低下、採卵数の減少というデメリットは確実に受け入れるしかありません。
つまり、メリットは非常に見えにくいが、デメリットは明らかに見える状態です。そこに、学術的に明らかに推奨できる材料もないとなれば、多くの場合では手術をしない選択になることが多いのが私の外来です。
ただ、手術のおかげで妊娠できたという方は絶対に一定数はいます(個人単位では、手術しなくても妊娠したかは分かりませんが…)。