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不妊治療のことや女性の体のお悩みについての
コラムを掲載しております。

子宮内膜症はなぜ不妊リスクなのか?

子宮内膜症は、子宮内膜組織が子宮内腔以外の場所で増殖する病気で、不妊女性の約20%がこの病気を抱えていると言われています。卵管周囲や卵管采で増殖すると、卵管周囲の癒着や卵管采の閉塞を引き起こします。

卵巣内で増殖すると、チョコレートのう胞と呼ばれる状態になります。原因はわかっていませんが、卵子の質の低下や原子卵胞数の減少など、卵子そのものに悪影響を及ぼします。

 

子宮内膜症が妊娠に悪影響を与える原因としては、「性交障害」「卵管機能低下」「精子輸送機能低下」「卵巣機能障害(卵子の質の低下)」「子宮内膜への悪影響」などがあげられます。

 

「性交障害」:

性交による痛み、それに付随する負の感情で、女性・男性ともに性生活そのものが消極的になりがち。

子宮内膜症カップルは、そうでないカップルに比べて自然妊娠していない(2年の追跡)。

「卵管機能低下」:

卵管周囲に癒着が発生すると、卵管采の卵子ピックアップ障害がおこりえる。炎症により、卵管の受精卵輸送機能が低下する。

「精子輸送機能低下」:

排卵期における子宮の精子受動収縮が乏しく、炎症により精子の運動能が下がるという報告がある。

「子宮内膜への悪影響」:

慢性炎症が、子宮内膜の増殖・脱落膜化、着床障害、胚発生不良につながっている可能性がある。

 

上記の通りあらゆる不妊リスクとなりえます。ただ、一般不妊治療では、つまるところ最終的に自然妊娠したかどうかになるので、個々の因子を評価するの困難です。

 

「卵巣機能障害(卵子の質の低下)」(+子宮内膜への悪影響):

体外受精においても子宮内膜症があると成績が下がる。

子宮内膜症合併不妊と卵管性不妊(卵管以外には問題がないと思われる)のART成績を比較したところ、子宮内膜症合併不妊患者は、有意に妊娠率が低かった(オッズ比:0.56)。

出典:Barnhart K, et al : Effect of endometriosis on in vitro fertilization. Fertil steril 2002; 77: 1148-1155

 

私見:

子宮内膜症があるとそれだけで妊娠率は半分くらいになってしまう、という論文でした。

少し古い論文ですが、この論文は22の研究論文(2377の内膜症合併体外受精と4383の内膜症なし体外受精)をメタ解析しており、信頼度は非常に高いと思われます。

子宮内膜症があっても、2-3回のタイミング療法だけ妊娠するカップルはいくらでもいます。

どれくらい妊娠しにくいかと問われると、一般不妊治療ではどれくらいか回答しにくいのです。

しかし、体外受精でもオッズ比0.56であることを考慮すると、一般不妊治療では一般集団に比して半分以下であると予想されます(なぜなら、一般不妊治療では、体外受精における卵質・内膜への悪影響だけでなく、卵管因子、卵のpick up障害、排卵障害と悪影響を及ぼすエリアが増えるためです)。

 

総じて、私の外来では、「内膜症があると妊娠率は同年代の半分くらいになってしまいます。そのため、妊娠希望があるなら、先延ばしにしたり、途中で休憩することなく、最後まで走り切りましょう。タイミング療法ですぐに妊娠することもあるし、体外受精でも難渋することもあります」とお話ししてます。

 

更に悩ましいのは治療法の選択です。これに関しては、次回、コラムを投稿予定です(投稿すればURLに変更します)。

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