妊娠率を上げるために
◆良質の卵をひとつでも多く採取する
1.あなたに最適な排卵誘発法を探ります。
A.卵巣刺激の方法を変えてみる 
HMG(注射タイプの排卵誘発剤)を使ってたくさんの卵胞を育てる過排卵刺激を行う際は、採卵前に
排卵が起こるのを防ぐためにGnRHアナログ製剤を使用します。
これには、GnRHアゴニスト(スプレキュアなどの点鼻薬)と最近開発されたGnRHアンタゴニスト
(セトロタイド/注射薬)の2タイプがあります。
GnRHアゴニストを用いたロングプロトコールをスタンダードな治療としておこないますが、採卵数が少ないと
予想されるときには
ショートプロトコールで行うこともあります。
アンタゴニスト(セトロタイド/注射薬)は、アゴニストではなかなか良質の卵がとれないというような場合に
用います。人によっては、アンタゴニストのほうが卵の質がよくなったり、採卵数が増えたりすることも。
アンタゴニスト用いた場合 HCG注射のかわりにスプレキュアを投与して卵の最終的な成熟をうながすことも
できるので、 HCG投与により卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を引き起こしやすいPCO(多嚢胞性卵巣)の人には有効な
刺激法です。
B.クロミフェン周期で行ってみる 
HMGで過排卵刺激を行っても卵胞が発育せず、採卵数が1〜2個と少ない場合は、クロミフェン
(飲み薬タイプの排卵誘発剤)を使って体外受精や顕微授精を行います。
HMGに比べ排卵誘発効果がソフトな分、卵巣への負担が少なく、毎周期でも連続して採卵できるという
メリットがあります。人によっては、クロミフェン周期の方がHMGで過排卵刺激するよりも採卵数が多く
卵子の質がよくなることもあるのです。
またクロミフェンもセトロタイドと同様にスプレキュアを投与して卵の最終的な成熟を うながすこともできるので、
PCOの人は、クロミフェンに反応するようであればそのほうが安全です。
欠点は完全に排卵をコントロールできないので、自然排卵することがあり、採卵しても卵を回収できないことが
あります。
2.排卵誘発剤の種類と使用量を選択します。
月経3日目に超音波検査を行い、卵胞経、卵胞数を測定して、採卵可能な卵胞数を予想。また同時に
ホルモン検査を行い、使用するHMG製剤の種類と量を決定します。
月経3日目の血中FSH(卵巣刺激ホルモン)が高い時は、卵巣の反応が悪く良い卵が取れない可能性が
高いので、カウフマン療法を行って血中のFSHを下げてから体外受精を行います。
2回目以降の体外受精では、前回使用したHMG製剤の総使用量を参考にして、一日の最適な投与量を
決定します。
3.採卵日を固定せずにベストなタイミングで採卵します。
卵胞が成熟する前に採卵すると未熟卵が、また卵胞が成熟し過ぎると過熟卵が多く含まれ、質の良い
受精卵ができません。良好な胚をえるためには、卵胞の大きさだけでなく、血中のホルモン検査(E2)を
行い、日・祭日に関係なく卵子の成熟がベストなときに採卵することが大切です。
◆着床しやすくする

1.胚移植方法を工夫します。
A.新鮮胚移植のバリエーション
●分割胚移植
採卵後2〜3日目の4〜8細胞期胚を1〜3個移植します。見た目の特徴から胚の質を推測するビークの
分類でのグレード1または2の良好胚で、かつ2日目に4細胞、3日目に8細胞まで分割した良好胚の場合は
1〜2個。グレード3もしくはそれ以上に質が悪い胚、または分割のスピードが遅い胚は2〜3個移植して
います。
※残りの胚については、そのまま培養を続けて採卵6日目までに胚盤胞になった場合には、ガラス化法で
凍結保存します。
●二段階胚移植
良好な分割胚移植でも妊娠しない場合は、二段階胚移植を行うこともあります。ただし当院の成績では、
胚盤胞まで分割すればいったん凍結しておいて、ホルモン補充周期に胚盤胞凍結融解移植をするほうが
二段階胚移植よりも妊娠率が高いため、積極的には行っていません(希望された方のみ)。
●胚盤胞移植
二段階胚移植と同様の理由で、胚盤胞のみの新鮮胚移植は積極的には行っていません。
B.新鮮胚での妊娠が難しいときには凍結融解胚盤胞移植を! 
●子宮内膜をベストの状態に
新鮮胚移植でなかなか妊娠しない場合でも、凍結融解胚盤胞移植を行うことで高い成果をあげています。
子宮内の環境を考えれば、本人のホルモンバランスが乱れている刺激周期(排卵誘発剤で卵巣刺激をした
周期)は決してベストの状態ではありません。そこで、胚盤胞をいったん凍結し、ホルモンを補充して
理想的な子宮内膜の状態をつくり出してから融解して移植すると、たいへん高い確率での着床が期待でき
ます。ホルモン補充周期で融解した胚盤胞を移植すれば、新鮮胚盤胞移植では妊娠する可能性の低い
6日目胚盤胞も高い妊娠率が得られています。
ただし、ホルモン補充周期の場合は、本人の卵胞が育たず排卵も起きないので、当然黄体もできず
黄体ホルモンもまったく分泌されません。ですから、めでたく妊娠した場合でも、胎盤が完成して流産の危険
が減る妊娠8〜9週くらいまでは薬によるしっかりした黄体補充が不可欠です。
なお子宮内膜に問題がない人であれば、自然周期に戻すこともできますが、排卵時期を見極めるために
頻繁に通院していただく必要があります。
また、非常に着床率が高い方法なので、双子以上の多胎妊娠を避けたい場合には1個戻せれば十分と
考えてください。
●胚盤胞はガラス化法で安全に凍結
胚盤胞の凍結は、採卵をした周期に新鮮胚を戻し、残りの胚を続けて培養して採卵6日目までに胚盤胞に
なったものを凍結する場合と、過排卵刺激の副作用である卵巣過剰症候群(OHSS)の悪化を避けるために
採卵周期での移植を避けて受精卵を胚盤胞まで発育させてから凍結する場合があります。
なお凍結方法は、胚盤胞に適した方法として開発されたガラス化法を用いて安全に凍結保存しています。
●着床を助けるための胚盤胞透明帯完全除去法
胚盤胞を移植しても妊娠できない方には、着床を助けるために胚盤胞のまわりを囲んでいる透明帯という
殻を全部取り除く胚盤胞透明帯除去を行ってから移植します。
2.胚移植をスムーズに行えるように模擬胚移植をします。
A.模擬胚移植も実施します
胚をスムーズに子宮内に移植できるように、前もって子宮の状態(子宮内腔の長さ、子宮の方向、
子宮頚管の性状)を把握しておくため、またどのような胚移植チューブが適当かを調べるために、
体外受精を行う前周期の月経終了後に模擬胚移植を行っています。
B.胚移植
体外受精の妊娠率は、胚移植が大きなウエイトを占めているため、時間をかけて慎重に行っています。
超音波でチューブの位置を確認しながら、子宮内に胚移植チューブを挿入し、子宮内膜の最も厚い位置に
胚を移植します。
モニター画面を通して、移植する胚を確認していただき、その胚が胚移植チューブに吸い上げられ子宮内に
培養液とともに入っていくのを、リアルタイムで見ていただきます。
また移植後には、移植した胚を含めた全ての胚のグレードと個数と胚の写真を記載した胚移植報告書を
お渡ししています。余剰胚があれば胚盤胞まで培養後凍結し、受精卵凍結報告書をお渡しいたします。
胚移植報告書

3.胚移植後にできるだけ安静にします。
胚移植後は、内診台で20〜30分、さらにベッドで2〜3時間休んでから帰宅してもらっています。
安静にすることで、子宮の収縮が少なくなり着床率があがると考えているからです。もしも可能であれば、
胚移植後2、3日は、安静にすることをおすすめします。
4.様々な黄体機能補充法を行います。
採卵後は、黄体機能が不十分になりますので、プロゲステロン注射、プロゲステロン膣坐薬、HCG注射、
ステロイド剤、ビタミン剤など、様々な薬で着床維持を期待します。
5.バイアグラ腟錠で子宮内膜の血流の改善を期待します 。
受精卵が着床するためには、十分な厚さの子宮内膜が必要です。そこで子宮内膜が薄い人には、
血管拡張作用があるバイアグラ腟錠をHMG開始日から採卵までに1日2回、7日間投与します。
子宮内膜の血流が改善し、内膜が厚くなり、着床率があがるといわれています。
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